フードセレクション2007特別企画

風土とFoodをめぐるトークセッション

キーワードは「地域 ち・い・き」

「地域」の風土や歴史、文化をバックボーンに持つ食品は、まさに「地域の風土が生みだすFOOD」。フードセレクション2007は、地方銀行8行がそのネットワークを活かし、全国の「安心・安全・本物」の食品を求める生活者にバイヤーを通して地域の隠れた名品・特産品を、提供できるようにしようという試みです。

特別企画としておこなわれた食と地域をテーマに繰り広げられたゲストのトークをダイジェストでご紹介します。

食をめぐるトークショー

おいしい食材が地域を元気に、日本を元気に

三國 清三氏/王 理恵氏/澁谷 耕一氏 司会:永山 美穂
誰が、どんなポリシーで作っているのか?

(王)これだけの地域のさまざまな食材を一箇所で試食できる機会は貴重なことですね。

(三國) こういう取り組みが本物のスローフードに繋がっていきます。誰が、どんなポリシーで作っているのか?という情報は、普通はわからない。何が良くて、何が悪いのかを判断できる材料がここにあります。これこそ情報です。

(澁谷)地方にはおいしい食材がいろいろある。北から南まで、海や山や川の食べ物を一同に集める。1つの銀行ではできないことを、全国の銀行が集まればおもしろい企画ができるのではないか、と考えてこのフードセレクションを企画しました。所期の目的は、多くのバイヤーに地域の食材を知っていただき、出展者とバイヤーが商談をするということでしたが、それだけでなく、各県からあつまる出展者同士が「本物の食」に関して真剣に情報交換をしているのが印象的ですね。

こども時代の味の記憶が大事

(永山)三國さんと渋谷さんは、お二人とも北海道のご出身ですね。

(三國)はい。親父が漁師だったもので、こどもものころからホヤを食べていました。ホヤは海のパイナップルと言われます。甘味、塩味、酸味、そして内臓の苦味の4味が備わっている食材です。この4味で味覚を 鍛えて、世界の料理に挑戦したのです(笑)。そんなこともあり、ふるさとの味を伝えるためにも「ホヤ大使」をやっています。

(王)こどものころに、一番はじめに食べた「味の記憶」というのは、こころに刷り込まれるというか、とても大事な気がしますね。

全体写真

(三國)こどもの好き嫌いは、実は両親の影響があるのです。親が嫌いなものを、こどもも嫌いになる。

おいしい食卓の雰囲気をつくる

(王)私の母親はぎんなんが嫌いでした。そのせいか、私はぎんなんの味そのものが好きとか嫌いとかではなく「ぎんなんは嫌いな方が良い」と思い込んでいたのです。それぐらい両親の影響は大きいですね。

(三國)ピーマンが嫌いだというこどもを持つ母親が来て、「あんなに美味しいものをなぜ食べないのかしら。主人もピーマンが大嫌いなのよね」と言うケースが多い。こどもはお父さんが嫌いだから、自分も食べなくていいと思ってしまう。だから、こどもの味覚を育てるためには本当は嫌いなものでも「おいしい、おいしい」と食べて欲しい。家庭の楽しく、仲良く、おいしい食卓の雰囲気をつくってほしいと思います。

SESSION 1

地元の野菜を食べて健康に

王 理恵氏
世界のホームラン王の肉体と精神を作ったのは、手づくりの温かな食卓。さらに、「噛む」という食習慣の重要性を気づかせてくれた王監督の病。野菜のソムリエとしての専門知識を交えながら、「食」「環境」「健康」「地域」へとテーマは広がります。

野菜ソムリエに興味を持ったきっかけは、「食」と「環境」の重要性に気が付いたから。野菜に関していえば、地元の新鮮な野菜を食べるのが一番だと思っています。

父である王貞治を見てきたので、一流スポーツ選手の試合外の時間の顔に興味がありました。父の現役時代、夕食が始まるのは試合が終わってから。毎晩母は15品を順番に出していました。わかめと胡瓜の酢の物が必ず最初。筋肉をやわらかくする、疲れきった体に食欲を出すという作用を考慮したのだろうと思います。

元気で明るい母でしたが、胃がんに侵され点滴治療で「食べる」事ができなくなってから体力と精神の衰えが顕著になりました。母の死をきっかけに、食べるものが体をつくっていく、それがいかに大切なことかを実感しました。

王理恵氏写真

最近、父も胃がんを患いました。大食いで早食いだった父には、「噛む」という食習慣が身に付いていませんでした。だから、一度退院して、すぐに再入院。いまは、一口100回は噛むようにしています。

両親の病気を通じ、改めて「食」の大切さを知り、もっと自分の食べるものに気をつけ、勉強しなければならないと思うようになりました。大人になってから食習慣を変えることはなかなかできないので、小さい頃から正しく食べる習慣、考え方を身につけることが大切だと思います。

SESSION 2

地域が育んだめぐみを活かす

三國 清三氏
味覚に対するキャッチ力は「気づき」につながる重要な感覚。1999年から取り組まれている「食育」にまつわるエピソード、生産者を守ることで伝統を守る「スローフード」運動のあらましなどに触れながら、地域が育んだ恵みを活かした「人づくりと地域の活性化」についてご講演いただきました。

知ることがなければ気づくということはありません。たとえば、天然の鯛と養殖された鯛を食べ比べてみてください。ほとんどの人は、脂が乗っていて、ぷりぷりと歯ごたえがよく、美しい桜色をしている方が美味しいという。でも、それは養殖モノです。天然の鯛は、厳しい自然の環境の中で育まれた味がする。

日本人は「旨味」にとても敏感です。一流といわれる外国人のシェフ仲間でも、旨味には鈍感な人が多い。自然の素材が持つ、かすかだけれど本物の旨味がわかる感覚を、日本人はもっと大事にしなければと思います。

三國清三氏写真

このフードセレクションの会場を巡ってみて、一つ一つの商品・ショップがどれだけのブランドになっているのか、今後なっていくのかに、とても興味を持ちました。そのブランド力に作り手である出展社の皆さんも気づかないといけないし、食べるほうも気づかないといけないです。両者が気づかなければ、商品価値はゼロに等しいのですから。

味覚に対する気づきは早ければ早いほどいい。本物の味を知ること、地域のめぐみを大切にすることはすごく重要です。ですから、私はいま小さなこどもたちに対して「食育」の授業を行うことが多いですね。